d94n2s blog

自作小説の公開、管理を目的としたブログ。変な小説を読みたい人は寄っといで。

小説

「アンドロイドには向かない職業」SFミステリーです。

Ⅰ 電源が入るとルーシーに生気が戻った。合成樹脂の瞳が動き出し、私の顔に焦点を合わせる。同時に少し頬が緩んだ。端正な顔立ちに、戸惑いながら微笑むような表情が浮かぶ。完全な静止から始まった僅かな動き。その効果は絶大である。こんな単純なことが無…

「一億番目の男」小説。

「いつまでもつきまとってんじゃねえっ」 野太い怒声と共に、でっかいゲンコツが飛んで来た。 鼻っ柱に世界がひしゃげるような衝撃を感じ、芳夫は意識が飛びかけた。それは何とか保てたが、平衡感覚は粉々になって、思わずよろめき尻餅をついた。 痛む鼻に手…

「クープアムア」SF小説です。惑星探索もの。

1 魅力のない惑星だった。 地形は凹凸に乏しく、どこまでも赤茶けた土と岩石が続くばかり。かつては海だったとおぼしき低地もあるが、とっくの昔に干上がって、細かい砂が溜まっているだけだ。 大気は薄めで空には雲がほとんど無く、薄ぼけたような青灰色が…

「小さな事件」2019年頃に書いた小説です。

まあ、何と言いますか、間が悪いっていうことはあるもんですねえ。まさかあんなことになろうとは。夢にも思いませんでしたよ。ハハハ。えっ、笑ってる場合じゃない? 本題を早く話せと、ごもっともで。それじゃあ始めましょうかね。まあ、言ってしまえば同じ…

「頭は帽子のためにある」奇想小説。

私は最初、一次元の存在に過ぎませんでした。 体はただ線のように細く長く伸びているだけで、幅も厚みもまったくありません。周りの世界がどういうものなのかも分からず、ただ自分が存在していると気がついて、漠然とした不安のようなものを覚えるばかりだっ…

「終了ボタン」    小説  初投稿です

「ただいま」 「お帰りなさい。遅かったわね」 「飲みに誘われてね。昇進したばかりで周りに気を使わなくてはいけない時期だ。断るわけにはいかないだろう。これでも適当なところで切り上げてきたんだぜ」 「別に責めてはいないわよ。おでん作ったんだけどご…